耳鳴の中で最も多いものが加齢性難聴に伴う耳鳴です。誰しもが加齢とともに高音の聴力から低下していきます。耳鳴は、障害された聴覚の周波数帯域で発生しますので、多くの場合はキーンと言う耳鳴が生じます。加齢性難聴に伴う耳鳴はタイナスの効果が出やすく、特に軽度難聴、初期の耳鳴であるほど軽減率は高いです(9割以上の患者さん)。一方で補聴器が必要な位に難聴の強い方は、まず補聴器やTRTを勧めます。補聴器やTRTの長時間装用が嫌な方はやはりタイナスが選択肢に入ります。短時間使用で耳鳴をコントロールしたい、特に夜間の耳鳴を抑えたいと言う方はタイナスの単独使用、または補聴器、TRTとの併用が有効です。

加齢性難聴の実例(各例は、個人ではなく複数例の平均です)

【軽度の加齢性難聴 Aさん(50代)】

Aさんはごく初期の難聴で高音が少し低下しています。タイナスにて一時的に耳鳴が消失します。それで非常に楽になりました。気になるときに時々タイナスを使うことで、いつでも耳鳴をコントロールできると言う気持ちができ、悩みを解消することができました。
タイナスの1種類の音のみで10分程度耳鳴が軽減できます。他方、比較的小さな音で、30分程度以上使用する方法も併用しています。1週間に2,3回程度の使用で安定しています。

【軽度の加齢性難聴 Bさん(50代)】

Bさんも同様の難聴です。やはりタイナスで耳鳴がほぼ消失するのですが、それが一時的であるために悩みが解消しませんでした。しばらくタイナスで試した後に、「常時コントロールできる状態にしたい」と言うことでTRTを勧めました。長時間使用する、さらに寝る時にも使用することで耳鳴が気にならない状態が継続しています。

【軽度から中等度の加齢性難聴 Cさん(60代)】

Cさんは加齢性難聴が進み補聴器が必要です。このように聴力の点から補聴器適用の方は、耳鳴に対しても補聴器が重要になります。Cさんは、ダイナスの試験使用で1時的なコントロールしかできないことに不満が残りました。そこで説得し補聴器に移行しました。補聴器使用になれると、耳鳴が殆ど気にならなくなりました。そのまま非常に良好な状態が続いています。

【軽度から中等度の加齢性難聴 Dさん(50代)】

Dさんは軽度の難聴ですが、仕事中に聞こえにくいことでストレスがあります。この場合も耳鳴、難聴の両方の意味で補聴器やTRTが重要であり、まずそのことを説明しました。TRT(補聴器+ノイズ)の使用によって聞こえにくいことのストレスがなくなり、耳鳴も改善したため良好な状態が続いています。

【軽度から中等度の加齢性難聴 Eさん(70代)】

一方でEさんの場合、聴力的にも補聴器が必要です。しかしタイナスがとてもよく反応して毎回すぐに耳鳴が消えてしまいます。あるいは小さな音量でタイナスを続けると、ずっと気にならない状況が続きます。既にリタイヤされているので、家でタイナスを聞く機会は十分あります。聴力的には補聴器が必要と説明しても納得されず、そのままタイナスで様子を見ています。実際私もそうなのですが、補聴器をつけること自体にストレスを感じる方もいます。短時間、時々タイナスを使うだけで耳鳴の苦痛が改善されるような方はそのような気楽な方法も良いかも知れません。

【重度の加齢性難聴 Fさん(80代)】

まず補聴器が適応です。Fさんは、補聴器が未経験のため、まず補聴器で経過を見てもらうことにしました。やや耳鳴が気にならなくなったとのことで、このまま経過を見ています。

【重度の加齢性難聴 Gさん(80代)】

まず補聴器が適応です。 Gさんは、既に補聴器をつけておられましたが、それでも耳鳴がつらいとのことでした。補聴器をつけている間は耳鳴が気にならないが、はずすとすぐに耳鳴が始まるとのことです。夜間に目覚めたときにつんざくような耳鳴がつらいために、タイナスで耳鳴を抑えます。このように通常で補聴器を使用し、ときどきタイナスを使用するという併用される方は一定数おられます。